共有端末におけるパスキー利用可否の解像度を上げる

ritouです。

Xを日々パトロールをしていると、共有/共用端末(これ正式な用語としてはどっちなん?以下、共有と呼びます。)でのパスキー利用について思いを馳せる人が目につくようになりました。

だいたいの人は

共有端末ではパスキーは使えない!完

という認識でしょうけれども、実際どうなんでしょうか?

今回はもうちょっと解像度を上げるための細かい話をしましょう。

共有する範囲

まずは 共有端末と言っても、実は細かく色々あるんじゃないの? というところです。

サービスを利用するにあたって、ユーザーが専有できる範囲はどこなのか、複数ユーザーと共有する範囲はどこなのかというところがいくつかあるでしょう。

  • (A) 端末ごとにユーザーが異なる: 個人PCやモバイル端末を利用
  • (B) 端末のプロファイル(ログインユーザー)が異なる: 会社のPCに社員がログインして利用
  • (C) 端末のプロファイルは一緒、ブラウザのプロファイルが異なる: ユーザーが複数のGoogle Workspaceアカウントを持っており、アカウント毎にChromeのプロファイルをわけて利用
  • (D) 端末、ブラウザプロファイルまで一緒: 家族で使うなんとかかんとか

(A), (B)あたりは個人端末扱いと言えるでしょう。(D)もわりと直感的です。 (C)は他人とというよりも個人で複数アカウントという感じかもしれませんが、Google視点では別人ですよね。なので、このあたりから共有端末と呼んでも良いのではと思います。

この記事ではここまでの整理にして、その先の利用者の多様性(家族、ネットカフェのユーザー、会社の訪問者、市役所の訪問者)みたいなところは考慮しません。

パスキーが使えるかどうか の判断においては、この共有範囲に対してパスキーの管理方法が一致するかによって決まります。

Authenticatorの種類

これはだいたいイメージできているものだと思います。

  • (1) プラットフォームアカウントに同期されたパスワードマネージャー : iCloud Keychain, Google Password Manager
  • (2) 端末のプロファイルごとに管理: ちょっと前までのTPMに保存されるやつ
  • (3) 外部のパスワードマネージャー: 1Password
  • (4) ブラウザプロファイル単位で管理: (2)よりもうちょい細かく管理されたやつ。MacOSChrome
  • (5) セキュリティキー: Yubikey
  • (6) 手元のモバイル端末で管理: Hybrid Transportでモバイル端末を利用

この(A)-(D)と(1)-(6)について、組み合わせで考えていけば良いのです。

共有範囲に対して利用可能なAuthenticatorの種類

猫に表にしましょう。

共有範囲 利用可能なAuthenticatorの種類
(A) (1), (2), (3), (4), (5)
(B) (1), (2), (3), (4), (5)
(C) (4), (5), (6)
(D) (5), (6)

こんな感じで、共有する範囲が広がるほどに利用可能なAuthenticatorの選択肢が限られてくるわけです。

ということで、(D)のように同一ブラウザプロファイルでユーザー認証が必要なケースの場合、

  • セキュリティキーを配布して利用
  • Hybridで手元のモバイル端末を利用

あたりのUXやパスキー管理自体で運用可能かどうかを判断する必要があります。

エンタープライズ領域のようにセキュリティキーの管理が可能なケースだったら良いでしょうし、Hybridの方はスマホアプリ+モバイルアプリでパスキーを生成しつつ店頭の端末でパスキーを利用みたいなこともあるかもしれません。

まとめ

細かく考えると 共有端末におけるパスキー利用はAuthenticatorの種類が制限されるものの不可能ではないかもしれない というお話でした。

きっかけ

今回の記事のきっかけはこちらのニュースです。

www.asahi.com

県病院局によると、看護師は2018年1月~今年1月、勤務時間中に同僚医師の電子カルテのパスワードを使い、アトピー治療用の軟膏(なんこう)や飲み薬の処方箋を計22回不正発行した。

県は電子カルテに2段階認証を導入するなど、再発防止を進めるとしている。

操作したのはブラウザではなく専用ソフトとかなんでしょうけども、こういうケースは(D)の環境と言えるでしょう。

コンビニのレジのようにバーコードで識別するぐらいの要件ならまだしも、

有印公文書偽造・同行使の疑いで県警に刑事告発

みたいなことになるぐらいの要件であれば、セキュリティキーを用いたFIDO認証を実装してみたらどうかなと思いました。

ではまた。