Yahoo! JAPANの複数プロフィール対応は実に興味深い

こんばんは、ritouです。

最近、Yahoo! JAPANがこのような対応を行ったそうです。

Webサービス(特にSNS)における複数プロフィール対応ってのは実際のところどうなのでしょうか。

Yahoo! JAPANは今までどういう状態だったのか?

ここからの内容は「YBBのADSLも使ってて何かのときに500円戻ってきたこともありつつ、特に一昨年秋ぐらいまでまでヘビーなYahoo! JAPANユーザーだった」私が考えた個人的見解となります。

Yahoo! JAPANにはアドレスブックやメールといった個人のツール、知恵袋や掲示板、グループなどの以前からある他人とのコミュニケーションツール、Yahoo!プロフィールを中心としたSNS機能、あと動画とか、もう区切り方がわからないほどたくさんのサービスがあります。
サービスを利用する際の"人格"という観点でいうと、以下のように整理されていたと認識しています。

  • (1) ログインしていれば利用可能、特に他人とのかかわりを意識する必要がないサービス
  • (2) Yahoo! JAPAN IDの他に"ニックネーム"と呼ばれるYahoo! JAPAN IDと同等?に扱われる文字列を識別子として投稿などを行うサービス
  • (3) Yahoo! JAPAN ID単位で識別子だけではなくより人格を意識した"プロフィール"を持ち、友人とのつながるしくみを持つサービス

不動産などで物件を探すときは別に他人から見た自分を意識する必要はないわけですね(1)。
掲示板など他人とコミュニケーションをとるサービスではユーザー識別子と発言などが結びつきます(2)。
ある時期以降、より人格を中心にフィードのしかけが用意されたSNS的なサービスが出てきました(3)。
この流れ、なにやらWebサービスの歴史を感じられるような気もしないでもないですね。

記事にあるとおり、Yahoo! JAPAN IDに対応するプロフィールはあったものの、ニックネームに対してのプロフィールはありませんでした。
(2)で複数の人格を使い分けていたユーザーが(3)のサービスを利用しようとすると一つの人格しか選択できませんので若干違和感を感じていた可能性があります。

また、Yahoo! JAPAN内のサービス間連携に支障があったかのではないかと思われます。
例えばYahoo! JAPAN ID/ニックネーム単位で利用できるYahoo!メッセンジャーでは、けっこう前に「プロフィールを見る」というリンクが付きました。
しかし、ニックネームで登録している友人はリンクさせるプロフィールが存在しませんでしたし、メッセンジャー上のつながりがSNSソーシャルグラフとは別の扱いになっている状況でした。
部外者が「どうしてこうなった」を考えてもしょうがないわけですが、今回のYahoo! JAPAN ID + ニックネームの数だけプロフィールを作成するという対応はこれらのカオスな状態を解消するための手段だと考えられます。

Yahoo! JAPAN ID/ニックネームとプロフィールの紐付けは可能か?

以前から、オークションやニュースのコメントなど、Yahoo! JAPAN ID/ニックネームを利用するサービスでは文字列の一部を*でマスクしたものがページに表示されたりしていました。
これは、Yahoo! JAPAN IDがメールアドレスの@以前、つまりコンタクト先の一部になっているユーザーがいるため、Yahoo! JAPAN ID/ニックネームそのものは隠したかったのではと思います。

個人のプロフィールページのURLなどにはYahoo! JAPAN IDではない(一見ランダムに見えてまぁ意味ありげな)文字列が利用され、Yahoo! JAPAN IDとの連携を意識させない意図が感じられました。
オークションなどの既存のサービスとソーシャル系のサービスとの紐付け(名寄せ)が行われることによるリスク軽減を狙っていたようにも思われますが、しかし実際は完全に切り離すことはできていませんでした。

SNS系のサービスであるブログのURLにはYahoo! JAPAN IDであったり(私もブログを開設したことがありますがニックネームも利用できたかどうかは覚えていない)、上記メッセンジャーのようにもともとYahoo! JAPAN ID/ニックネームベースのサービスとソーシャル系のサービスの相互連携を進める上でこれらの紐付けは隠せない状況です。
ということで、現状Yahoo! JAPAN ID/ニックネームを識別子としているサービスとプロフィールを利用するサービス間で情報の紐付けが可能なケースが存在しますので覚えておいていただければと思います。
そういえば、少し前にニュースのコメントにYahoo! JAPAN ID丸出し+表示名載せます騒ぎの際に似たような指摘をされている方がいました。

Yahoo! JAPAN IDとニックネーム間の紐付け(名寄せ)は可能か?

もともと紐付けさせられないためのしくみであると思います。
紐付けを知っているのはサービス提供もとのYahoo! JAPANと本人のみです。
ひとつのIDで七人のなんとかってページにあるように、Yahoo! JAPANの対応済サービス内では自分で切り分けた人格単位で思う存分楽しんでいただければと思います。

外部アプリケーションへのIdentity連携はどうなる?

私がざっくり確認したところ、まだ今回の複数プロフィール対応に関した変更は見られませんでした。

  • OpenIDのユーザー識別子として渡されるものは一種類
  • OAuth後に渡されるGUIDとして渡されるものも一種類
  • OpenIDのAXで渡されるプロフィール情報は、Yahoo! JAPAN IDに紐づいたプロフィール

Yahoo! JAPANは今後、ニックネームに紐づいたプロフィールについても、外部サービスと連携させようとするでしょう。せっかくなのでしたほうが良いと思います。
その際に、私が考える気をつけなければいけない点が2点あります。

  • (1) Yahoo! JAPAN ID/ニックネームに紐づいたプロフィール単位で外部サービスに渡すユーザー識別子も別にする
  • (2) 課金/決済を利用するサービスや、1ユーザーで複数アカウント登録を許可させないアプリケーション向けに「同一アプリケーション内では1ユーザー1アカウントを利用させる」オプションを用意する

(1)は、「Yahoo! JAPAN ID/ニックネームの紐付けを知っているのはサービス提供もとのYahoo! JAPANと本人のみ」としておくためです。
Yahoo! JAPAN内で別人格になっているものを外部アプリケーションで名寄せされてしまっては意味がありません。

(2)は、Yahoo! JAPAN内で「Yahoo!ウォレット」「Yahoo!ポイント」といった決済系のしくみが「1ユーザー1アカウント」になっているため、その機能を外部に提供する場合も同じポリシーにすべきという意味です。
外部アプリケーション側のポリシーで「1ユーザー1アカウント」になっている場合もこの方法で対応できるでしょう。
オプションのパラメータを受け取ったとき、ユーザーに対して「このアプリケーションには複数のプロフィールによるアカウント連携ができません。利用するプロフィールを選択してください。」といった旨を示し、利用するプロフィールを選択させるような対応でいいかと思います。

まぁこれぐらいのことは中の人たちはわかっていると思いますが、「特に一昨年秋ぐらいまでまでヘビーなYahoo! JAPANユーザーだった」私としてはYahoo! JAPAN様にサービス内外での不整合が発生しない状態を保ち、これからも大規模サービスを展開し続けていただきたいと思っております。
ここまでで、いったん説明はおしまい。

今回のYahoo! JAPANがやったことは有名どころのSNSでは実装されていません。
なぜこのような実装は進んでいないのでしょうか?

SNSにおける複数プロフィール対応は実際どうなのか?

すぐに思いつくところでFacebookの公開範囲設定やGoogle+のサークル管理でフィードの公開先を管理することが可能ですが、友達一覧は共通だったり、プロフィール情報を友達/仕事仲間/趣味用の友達向けに管理できるサービスはほとんどないと思います。
Yahoo! JAPANのような対応を行うメリットはこのあたりかと。

  • プロフィールやソーシャルグラフを完全に分けられることで、適切なプライバシー管理が可能
  • 外部アプリケーションにリソースを提供している場合でも、名寄せのリスクを防ぐことが可能

プライベートな仲間同士の発言から会社に結びついて大きな問題に発展してしまうこともよくあるこの世の中で、個人的にはわりとこれだけでもメリットがあるように思えます。
ではなぜ他のところでは実装されていないのか。

SNSにおける複数プロフィール対応のデメリット

デメリットというか課題は使い勝手でしょう。単一プロフィールのサービスを使い続けてきたユーザーに細かくプロフィールを分けて利用してもらえるでしょうか。
とはいえ、現在も、利用規約により複数アカウント作成が許可されているサービスでは内容ごとに複数のアカウントを作って利用されている方もいると思いますし、そういう方が管理するパスワードを一つ減らせるだけでもやる価値は多いのではと思ったりします。

既存のSNSを分割するのは大変だと思いますので、今後新規にSNSを作られる方はこの複数プロフィール機能について検討していただくのも良いのではないかと思います。

Y!Jの件の説明書いてるうちに疲れて尻すぼみになってしまいました。ではまた。

追記 : 今年はこのあたりの議論がいろんなところで出てきそうな印象

このエントリだけでは特に面白みはないが、このあたりの話は日ごろから何度も出ている。
LINEの記事にもこんなのあった。

フェイスブックは実名制に意味があるという一石を投じた一方、1つの顔じゃないといけないというプレッシャーを与えた。多面的な顔を出せない場になりつつあり、そこに潜在的な不満が生まれた。対してLINEは、『そうじゃないんだよ。人にはいろんな顔があるのは当然』という考え方。例えば中学ではオタクだったけど、大学ではチャラ男になった場合、それぞれのグループは絶対に交わってはいけない。数百人の友達と平均的につきあうのは無理がある」

テクノロジー : 日経電子版

LINEは電話帳の電話番号、つまり既存の関係性をベースに友達関係を構築していく。その中で、さらにプライベートで閉じたグループを作り、グループ内の全員で音声通話やチャットを楽しむこともできる。よそ行きの1つの顔に疲れたユーザーに、「グループによって違う顔を使い分けてください」というメッセージが受けたという分析だ。

テクノロジー : 日経電子版

これだけ見たらLINEすごそうだけどグラフの作り方が違うだけでグループの考え自体はFacebookにもあるのでいろいろ考えるところはある。

あと。。。武雄市の職員のFacebookアカウントの利用についてとかもこの辺に絡めた話できそう。